親、友達


うちの親は、あたしの友人や知人に対してものすごく気を遣う。
これは小さい頃から一貫していて、普段お小遣いくれないくせに
友達が来るとなると「お菓子を買ってきなさい」とポンとお金をくれたし、
お家へお邪魔すると聞くと「お花を買っていきなさい」とお金をくれた。
「そんなら普段からお小遣いちょうだいよ」そう何度思ったことか。


高校までは、お泊まりのしあいっこも許されなかったが(厳しかったなあ)、
学生になり、友達が遊びに来るようになると、おもてなしはエスカレート
してきたように見えた。私から見ると。


お泊まりに来る友人のために、親がコーヒーカップを新調した時には
ただあきれただけだったが、お布団を新調して私達の帰りを待っていた時には、
なんだか怒りが湧いてきて、「そこまでしなくていいよ!」と怒鳴ってしまった。
その時に親が見せた悲しそうな顔は、今でも忘れることができない。


私が学生の頃、親は良くこんなことを言っていた。
「うちはお金持ちじゃないから、あなたに十分なことをしてやれないけど、
最低限の暮らしはさせてあげるように頑張るから。
一生懸命勉強してね。あんまりバイトに明け暮れないでね」


あたしは、実家がお金持ちじゃなくても全く恥ずかしくなかったし、
それどころか、十分なことをしてもらっていると、ずっと感謝していた。
2人で一生懸命働いて、3人の子どもを育てている両親のことを尊敬していた。
それなのに自分達のことを卑下したようなことを言ってほしくなかった。


でも、あたしは本当に子どもだったんだと思う。
「娘が恥ずかしい思いをしないように」と精一杯の心遣いをしてくれていた
親の気持ちを踏みにじってしまっていたんだな。


だから私は最近、親が私の友人にしてくれる精一杯のサービスを
甘んじて受けるようにしている。
きっと、親もそうすることが嬉しいと思うから。


こないだリリー・フランキーの東京タワーを読んだ。
ちょっと嘘っぽいところがあって、全てには共感できなかったけど、
オカンがリリーさんの友人にご飯をふるまうシーンはぐっときた。
世の中の多くのオカンは、基本みんな同じなんだろうな。


こないだ実家で「今度また友達が来るんだ〜。ここには来ないけど」と
ビールを飲みながら父に話すと、父がこんなことを言った。
「今まで何人の友達が長崎に来てくれた?」
「何人かなんて数えたことないよ」
「いいから数えてごらん。結構な人数だよ」
「そうかもしれないねー。嬉しいことだよね」
「みんな遠くから君に会いに来てくれるんだよ。もっともっと感謝しなさい」


友達に対して、感謝はしてるつもりだった。
でも、親の方がもっと感謝してくれていたんだ。
こんな娘と仲良くしてくれる友達に。
「ありがとう」って思ってくれていたんだ。


だからというわけではないが(素直じゃない)、ちょっと数えてみた。


あっちゃん、さっちゃん(5〜6回は来てくれている)
のりくん、いわもとさん(2回)、たかさん(これは出張か…)、
きむ、けんちゃん、ゆらゆら、きぬこさん、はせ、えべちゃん、
かきまる、ともこ、けいこ、みねまり、ふみ、やえ、しょうこ、
はばらくん、もったにさん、やまお、しょうへい、おかゆ


ああ、たぶん数え忘れている人がいるんだろうなあ。。。。
ごめんなさい。。。。あたしバカだから。。。。


しかし、気の置けない友達と過ごす時間は、どうしてあんな楽しいんだろう?
遠く離れた地から来てくれる友達には、できる限りのおもてなしをしたい。
でも、なかなかお腹いっぱいのもてなしができないんだ。
毎回「ああすれば良かった、こうすれば良かった」と悔いが残る。