ハードボイルド/ハードラック

なんで本とかCDってすぐに溜まっちゃうんだろ。
最近はそんなに買わなくなったのに。不思議だ。


ある程度本が溜まって自分の部屋に置いておけなくなると、
いそいそと実家に持ち込むのだが、最近それをやると
「あんたの本で天井が落ちてくる日は近い(本棚は2階)」と
嫌味を言われるので、少し処分をしようと思っている。


まずは自分の部屋から、と本を引っ張り出すそばから読み耽る。
いつものパターンだ。きっと今回も整理できない悪寒。


吉本ばななの「ハードボイルド/ハードラック」を読んだ。
文庫本なのに奈良美智のカラー挿絵が入っていて贅沢だ。
「ハードラック」は、脳出血で倒れた姉を持つ妹の話。
姉は近く死んでしまうことが分かっている。
植物人間になることすらできない。


あたしは自分の家族を亡くした経験はないけど、もしかしたら
亡くすかもしれない、と思ったことはある。
この小説を読むとその時のことがまざまざと思い出される。
近しい人の死を覚悟した時に湧き上がってくるのは、生の喜びだったりする。
残酷に聞こえるかもしれないけど、本当なんだから仕方がない。


吉本ばなながこれと似たような経験をしたことがあるかどうかは知らないが、
まったくそういうことを体験しないで、こういう小説を書くことはとても
難しいんじゃないかな、とぼんやりと思う。


小説家が書いてること全ていちいち体験してたらとんでもないことだし、
(大体ねじまき鳥なんてどうやって体験するんだ)、体験してなくても
書けちゃうのが小説家なんだろうけど、多かれ少なかれ自分の体験に
基づいて書くことはあると思われ。
そういう風に自らを切り身にして、料理して、世間に「召し上がれ」って
供する小説家ってのはすごいなあと思う。


短い小説なので一気読みして「ふう」と本を閉じると、文庫本の帯に
「落伍者のための文学フェア」の文字が…。


ちきしょー!どうせオイラは落伍者だよ!今一番欲しいのはタチコマだよ!