晩酌のきっかけ

諸々の用事を済ませ、夜に英語。買い物して帰宅。
普段見れないテレビ番組を見た。


食わず嫌いに菅野美穂が出てた。
鳩のポーズの完成型をやってた。上級者だ。


コト―先生見た。南朋萌え…。
今日の話のメインじゃない柴咲コウを見て色々思い出す。
コウちゃんが、抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けてバンダナしてる設定。


帽子を探して奔走した時期があった。何個何個も帽子を買った。
患者の気持ちが明るくなるように、かわいくてやわらかいやつ。
でも、どんなゆるゆるのものを探してきても
「頭を締め付ける感じがするからイヤ」って言われた。
結局一番ラクだったのはバンダナ。
だから、それからはかわいいバンダナを探し求めた。


病院の枕はタオルを敷いて使っていた。
洗濯したくらいじゃ抜けた髪の毛はとれない。
タオルをたたみみながら、髪の毛を1本1本手でとった。
洗濯物をはじめ、病室に持ち込むものにはすべて紫外線を当てて
殺菌してから持ち込んだ。
ぬいぐるみのような起毛のものや、生ものは持ち込み厳禁だった。


洗濯したものを病室に持って行っても、
「紫色のタオルはイヤ。気分が悪くなる。もう持ってこないで」
と突然言われ、こないだまで普通に使っていたかわいいラベンダー色の
タオルを拒否されたりしたなあ。わがまま病人めー。


ビニールカーテン越しに話をしていても、病人は急に吐きたくなったり
トイレに行きたくなったりする。そんな時は、電動シャッターが下りた。
シャッターが上がるのをずっと待ったり、なかなか上がらない時は
屋上に行って、高台からの景色をぼーっと眺めたりした。


あの頃は、とにかく笑ってもらおうと一生懸命だった。
吉本の若手並みにがんばったつもり。
暗い気持ちでは病気は治らないけど、明るい気持ちなら治るかもしれない。
そんな気持ちでいっぱいだった。
髪だけじゃなく、病人の眉毛や睫毛が抜けた時は「ヤンキー」とからかった。
(あれは面白かったと言われる。)


当時あたしが住んでいた家と病院は70kmくらい離れていた。
毎月1万kmくらいクルマで走った。
家に帰るとどっと疲れを感じて、気を紛らわせるためにお酒を飲んだ。
甘いもの断ちをしていたのもあって、あの頃晩酌のくせがついた。
お酒を飲みながら泣いたことも何度もある。


最近こんな思い出モードになっているのには理由がある。
ちょっと怖いのだ。生存率2桁のゾーンを越えたから。
退院前に医者が私だけに言った言葉がフラッシュバックするから。
「たぶん再発すると僕は思う。覚悟しといて」
なんで私だけに言うのさー。ばかー。


でも、あの時に私は強くなったから。
明日からも清く正しく美しく。そして明るく強く生きていきます。