待ち合わせ

少し前、工事現場の近くで待ち合わせをしたことがあった。
工事の様子を見物しながら、いつも通り遅れてくる友人を待っていると、
監理の人間とおぼしき若い兄ちゃんが、記録写真を撮っていた。
撮影後、ガードマンのおじちゃんを相手に彼が愚痴っているのが聞こえてきた。


「『やらなきゃ良かった』という後悔より、
『やれば良かった』という後悔の方が辛いんっすよ。
だから俺はやりたいんっすよ」


仕事の話をしているようだ。なかなか熱い。
まあその気持ち、わからいではないよなー。
友人が現れる気配は、まだない。
川岸の手すりにもたれなおすと、秋風が頬を撫でた。


でも兄ちゃん。それはもしかしたら、自己満足の世界。
あなたが考えていることが、具体的にどういうことかは知る由もないけれど。


でも、自分が今、本当に発言すべきこと、行動すべきこと、進むべき方向。
それらは、今の自分が感じる辛さや気持ち良さだけで決めるべきじゃないと思う。


あなたが今やっているように、自分を説得したい時もある。
ただただ説得しなきゃいけない時もある。すべき時もあるけれど。


熱い思いがある時こそ、クールであれ。
なーんてね。


でも、芸術と恋愛は別。
好きならいっとけ!やっとけ!つっぱしれー!


と、鼻息が荒くなった頃、やっと友人は現れたのだった。