課題図書

小1から中1まで毎年、夏になると読書感想文を書いていた。
作文の出来が悪いと、「本が合わなかったのかもしれない」と
別の本を与えられ、その本でまた感想文を書いたこともある。
文には何度となく手を入れ、「良いもの」を作るよう努力した。
その結果、毎年きれいな盾をもらったり、県大会で発表をしたりした。


でも、当時は何のために書いていたのかは良く分かっていなかった。
文を書くことは私にとってプラスになったとは思うけれど。


中2の夏に漱石の「こころ」を読んだ。
ぐさっと心に刺さり、思うことはいっぱいあったが、
その思いを文章にすることができなかった。


夏に本を読んだら感想文を書かなくてはいけない。
理由もなくそんな強迫観念にかられていた私は、なんだかとても
困惑してしまって、そのことを正直に国語の先生に言ってみた。
(そういや宿題でもなかったな。)


「先生、私はこの本はとても良い本だと思います。
でも、文章にはできません」


すると、先生は言った。
「ははは。書きたくない時は、無理して書くことないんだよ。
書きたい時に書けばいい」


なんだか力が抜けた。
そして、それからしばらく感想文を書かなくなった。
高3の時に、いろんなしがらみから書くことになるまで。
この時に書いた作文は予想外の評価を受けてしまった。
その作文は残っていないけど、かなりつっこみどころが多く、
今考えてもかなり恥ずかしい。


あれから10年が経った。
最近、数年ぶりに課題図書を与えられた。
感想文を書くか?いや書かないだろうな。
分からない。まだ読んでいないしね。